その後も、例のJKクラブでうちの女生徒が犯されたという話がちらほらと聞こえてきた。大体週に一度くらい。
それが多いのか少ないのかはともかく、あたしは沈黙を決め込んでいた。
風紀委員なんだから何とかしなければ。そんな事は分かっている。分かっているけど、真佐美さんの前に出る勇気がなくて、ぐずぐずしていた。
今日は会議があるからその後で考えよう。先に顧問の先生の頼まれ事をしなくちゃ。風邪気味だからまた今度。
それに、これだけ噂が広まっている中で真佐美さんに付いて行って輪姦されるなんて、被害者にも問題があるのではないか。もしかしたら、分かっていて誘いに乗ったのかもしれない。冒険してみたかったとか、エッチな気分だったとか。そんなのまであたしが構っていられない。
言い訳なんかいくらでも思いつく。
「真田さん、私に話があるんじゃなかったの? ずっと待っているんだけどな」
しばらく大人しくしていると、あちらの方から声をかけてきた。
まさか真佐美さんが風紀委員の部屋にやってくるなんて。完全に想定外だった。
「え、ええと……その……」
あたしは無様にうろたえるばかりだった。真っ赤になった顔を見られたくなくて、下を向いて書類を探すふりをする。
「痴漢されちゃったこと、まだ引きずってるのかな?」
真佐美さんがクスクス笑った。
「そ、そんなこと! い、忙しかっただけですっ」
「そうかしら?」
完全に心の中を見抜かれている。穴があったら入りたい恥ずかしさだった。
「クリトリスを生で弄られちゃったんだもの、仕方ないわ。私だって同じことされたらイクわよ。オシッコ漏らしてヒィヒィ声出して」
「そ、そ、それは……あたし……」
何も言えなかった。言葉が出てこないまま、口だけパクパク。
「真田さん、いい顔してイッてたわよ」
「!」
真佐美さんは明らかにあたしをからかって楽しんでいた。
まったく、どれだけねじれた性格をしているのだろう。
「不満なの? 事実でしょ。じゃあ訊くけど、仮に痴漢の手が私のスカートの中に入っていたら、あなた私を助けてくれた?」
思わず睨むと真佐美さんが言った。
「え?」
「あの状況で出来ることと言ったら、大声を出すか耐え抜くか二つに一つ。注目を浴びて恥をかくくらいなら、我慢してみせる。私だってあなたと同じようにそう考えるもの」
「……」
「結果的にあなたは、イカされる私の姿を見物することになるのと違うかしら」
「……」
確かにその通りだろう。だって何も出来ないんだから、そうなるしかない。
真佐美さんとあたし。女の子が二人いてあたしだけが被害に遭った。つまりあたしの運が悪かったということ。
「ふふ、あまり気に病まないことね。あの時のことを思い出してオナニーしてるんじゃないの?」
「し、してませんっ」
あたしは立ち上がって叫んだ。
「私はあのJKクラブで最初に輪姦された後、オナニーしたわよ。犯されたその日の夜に。ねえ真田さん、あなたJKクラブに来てみない?」
「は、はぁっ?」
この人は一体何を言い出すんだろう。あたしはこれでも取り締まる側なのに。
「最初は抵抗するでしょうけど、必ず気持ちよ~くしてあげるからさ。私が保証するわ」
「お、お断りしますっ! わざわざ強姦されに行くなんて!」
あたしはまた叫んだ。
「あなたもどうせ、私があそこで輪姦された時のビデオを見たんでしょ?」
真佐美さんは顔色一つ変えずにあたしを見つめた。
「そ、それは……職務上確認しておく必要があって……」
「どうだか。まあいいけどね、みんな知ってることだし。本気で悲鳴上げて抵抗していたはずの女がイキまくってヒィヒィ叫ぶんだから笑っちゃうでしょ」
真佐美さんは自嘲的に唇をゆがめた。
「押さえつけられてでもクリトリスを弄られちゃったら女は終わり。あなたも体験した通りよ」
「……」
「……ま、今日の所はいいでしょ。私に話があるなら、いつでも聞くから」
真佐美さんは含み笑いを残して出て行った。
「……」
後ろ姿を見送り、のろのろと腰を下ろす。
動悸が収まらない。額に手を当てると冷や汗で濡れていた。
その日の夜、あたしは真佐美さんの輪姦ビデオがアップされていた会員制サイトに行ってみた。
いいようにあしらわれて手も足も出ず、モヤモヤした気分だった。
真佐美さんの哀れな犯され姿を見てやれば少しは溜飲が下がる。そんな気がしたのだ。
そして、サンプル動画のリンクをたどって目に飛び込んできたのは「新作! 女子高生絶頂痴漢地獄」の文字。
「ああっ!?」
思わず声を上げてしまった。
だって、刺激的な宣伝文句と裸だらけのバナーで埋め尽くされたサンプルページに掲載されている紹介画像の女の子は、他ならぬあたしだったのだ。
真佐美さんと二人で電車を待っている様子を、斜め横から撮ったものだった。
もちろん目線にモザイクは入っている。
どういうこと? 訳が分からないけど、モデルは間違いなくあたしだった。
ドキドキしながらバナーをクリックする。
「うっ……」
画面の上半分を占める画像にあたしは声を失った。
真下から見上げた、大写しのスカートの中。膝まで降ろされた下着が手前でぼやけている。
剥き出しの女性器にピントが合っていた。見慣れた自分のマンコだけど、こんな角度で見るのは初めてだった。海外サイトだからいわゆる無修正というやつだ。
陰裂に潜り込んだ指に、クリトリスを根元から摘まれた状態。すっかり剥けてしまったクリトリス亀頭部が、指の間に挟まれてひしゃげている。
太腿の内側が光っているのは、失禁の痕跡だろう。
情けないことに、あたしの膣穴は白っぽく湿っていた。濡れていることがはっきりと分かるレベルだ。
捲れたスカートの向こう側に見えているのはボロンとはだけられた乳房。これまた情けないことに、あからさまに乳首が立っていた。
ずらされたブラの陰になって、顔が見えないのがせめてもの救いだった。
痴漢に蹂躙される自分の姿が、ネットに晒されてしまうという事実。
あの時のあたしがどうなっていたのか、思い知らされて余りある証拠写真だった。
それからあたしはサンプル動画を再生してみた。迷いはあったけど見ずにいられなかった。
まずはスカートの中に入った手に下着をズルズル降ろされていく様子。
焦ってお尻を振りながら必死で太腿を合わせているけど、まるで防御になっていない。
こんなに簡単にマンコを出されてしまうなんて。悔しくなるほどあっさりと下着を脱がされてしまっていた。
ずいぶんとワレメが目立つ。でも見た目は悪くない。ぴたりと閉じているし、色素沈着もないし。
そのワレメの中に男の指先が潜り込む。
クリトリスを探されるあたしは、相変わらずお尻を振って抵抗するだけ。
そんな動きじゃ全然駄目だ。男の手首を捕まえて引っぺがさなくちゃ。見ていてイライラするほどとろくさかった。
そして数秒後には指先に挟まれたピンク色の突起が露出していた。
クリトリスを揉まれ、太腿をヒクヒクさせるあたし。
あの時の感触がよみがえって、ワレメの内側で小陰唇がきゅっと縮んだ。
サンプル動画だから速いテンポで画面が切り替わっていく。
ワレメの下端部分から白っぽい液体が滲む様子。
耐えきれずに失禁してしまう様子。飛沫がカメラのレンズにかかった。
スカートの裾が揺れる度に、はだけられた乳房を揉まれる様子が見え隠れする。
「うう……」
ツルンと剥けたクリトリスが大写しになった時、あたしは停止ボタンを押した。
心臓が短距離走の後みたいにバクバクだ。
「こんな……こんな……」
ふらふらとベッドに倒れ込む。
「どういうことなのよ……」
真佐美さんの輪姦動画があったサイトにあたしの痴漢動画がアップされたことは、ただの偶然の筈がない。つまり、最初からその目的で? あたしに恥をかかせるために?
真佐美さんならやるだろう。
あたしはまんまと罠にかかって、期待通りに痴態を晒したのだ。そういう答えしか出てこない。
あの人にはもう関わらない方がいいのではないか。
さもないとこの次は……犯されるに違いない。弱気がよぎった。
「でも……」
強姦事件の報告が毎週のように上がってくるのに、風紀委員長の立場で黙殺を通せるはずもない。現状でも対応が遅すぎるくらいなのだ。
あたしは天井を見上げた。
もう手に負えない。顧問の先生に相談しよう。
本来は被害者だったはずの真佐美さんは、最悪のケース退学処分になるかもしれない。
自業自得という言葉が浮かんだ。
襲われたにしても、他人を巻き込むことなんか考えなければよかったのだ。
「それしかないか……」
あたしは呟いた。
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